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進化した「蓄光」素材

『蓄光』とは?

蓄光とは、大まかには、明るい場所で文字の通り「光を蓄える」事によって、周囲の明かりが消えた後にも物質が一定時間発光を続ける事を指します。
この発光現象(=『りん光』)は、『蛍光』とも原理が近いものですが、励起のための周囲の光が消えた状況で発光現象が続くことが大きな違いであり、それを原理として「夜光」の役割を果たします。
そうしたことで「光を蓄えて発光」(=光を受ける状態と発光する現象との時間差がある)という性質が、「災害・事故などで急に照明が遮断された環境」において、非常に大きな役割を果たすことになります。

実際に今日では『夜光塗料』として使用されているものは、概ねこの『蓄光』である事が殆どですが、これを正確に言うなれば「蓄光性夜光塗料」であって、ここでは暗所で光る事の「夜光」と、そのプロセスや性質が表された『蓄光』の言葉は区別して使用する事が望ましいでしょう。

化学上の正確な定義は別にして、『サイン・標識類の材料としての性質の違い』という視点においては、以下のように簡単に捉えておいても差し支えありません。

蓄光・蛍光・反射の性質と用途の違い


「蓄光」
性質

明るいところで光を蓄える事によって、『暗所でも一定時間発光が続く』

特性・用途

「反射」のような強力な輝きは持たず、暗所での視認性は時間経過とともに徐々に低下してゆくが、光が蓄えられていれば、全く光源のない場所でも一定時間の視認が可能であるため、非常時・停電時における目印として非常に有効である。


「蛍光」
性質

光・紫外線などに反応して、明かりのある場所では『鮮やかに見える』

特性・用途

暗所では視認できず、著しく薄暗い環境や照明によっては機能しない場合があるが、鮮やかな色彩でよく目立つため、日中や照明のある屋内環境で当該箇所の区別明示に適する。


「反射」
性質

受けた光を反射することで、『暗所でも光源の側からは明るく輝いて見える』

特性・用途

暗所での視認には光源が必要であるが、光源に向かってその光を反射させる事により、光によって遠方からでも非常によく目立ち、夜間の工事現場や駐車場、道路標識、そのほか夜間にライトを使用する環境においての視認性が良好である。

安全で高性能な蓄光素材へ

さて、この蓄光素材の性能が近年において大幅に向上し、標識の用途に限らず一般家庭向けの用品にも身近に活用されている事はご存知の方も多いかと思われます。その一方で安全性つまり放射性物質に関する懸念のお問い合わせを頂く場合もあります。
ここで先に述べておきますと、当社・他社を含めて、現在一般的に取り扱われているこうした蓄光素材製品に放射性物質は含まれていません。

確かに初期の時代においての夜光・蓄光素材において長時間視認できるという必要性を満たすには、光のない状態でも励起のための放射線エネルギーを供給する目的で、微量の放射性物質の添加を必要としました。
そうした「自発光性夜光塗料」の添加原料として、かつての夜光時計などにはラジウム(Radium-226)が使用された事があり、それよりも安全性の高いものへの移行としてトリチウム(Tritium)、日本ではプロメチウム(Promethium-147)が使用されましたが、いずれもIAEA(国際原子力機関)やISO(国際標準化機構)が定める放射性夜光時計の規格に基づいて、しかるべき放射能量とケースの防護性に適っていなければならないことが前提です。

標識やサインなどにおいては、広い面積での視認性を要求されるうえ直接ユーザーの手の触れることも多いため、こうした自発光性夜光塗料を使用することができず、従って「蓄光性」の標識におけるその輝度性能や残光時間は限られたものとなっていました。

しかし安全性の観点から1993年、国内のメーカーによって「放射性物質を含む自発光性夜光素材」に代わる「性能の高い蓄光性夜光素材」が発明されたことで、蓄光素材は夜光時計・蓄光式サインのほか日用品にいたるまでその優れた利点が広く活用される事となりました。
昨今では防災の観点に加えて省エネとCO2削減上も有用である事から、こうした性能の実現が消防法令や規格に反映されたうえで蓄光式標識、蓄光式誘導標識の定義付けがなされ、現在ではさらに高輝度蓄光式誘導標識としての用途が定められるに至っています。

蓄光性素材のその他ラベル・標識への活用と注意点

安全ラベル・銘板としての対応

消防法規における避難設備としての蓄光式誘導標識・高輝度蓄光式誘導標識については、災害時の避難誘導という観点から、消防認定品のような当該規格の適合製品である事が必要ですが、そうした規格品でなくとも労働安全の視点において蓄光素材を活用することは、非常に有用なものとなりえます。

「急な照明遮断時によく見える」という性質が、安全面の向上において多くのシーンで役立つ事となります。

非常ボタン・停止スイッチ用ステッカー

ドア等へ貼付 (確認喚起・衝突防止用)

スイッチ用ステッカーは非常通報スイッチの位置を明確に示すほか、電源復旧時に工作機が突然動きだす事故を防止するための電源遮断操作に非常に有効的です。

ただし、これらを使用する場所においては避難誘導標識との混同を防ぐために注意する必要があります。 誘導標識の設置基準においても、その周囲に紛らわしい掲示物を設置しない事が要求されており、こうした掲示物を通路等に乱用することは、 本来の避難誘導標識を区別しづらくする事にもなりかねません。
しかし、その点に十分留意したうえで適切に活用すれば、工作機械などの再起動事故防止などには大いに役立つものであり、火災時の避難誘導においても、障害物への衝突を避けるために明示することで、避難時の事故防止に役立てる事も可能です。
また、『倉庫やピット内などの閉じ込め事故』の対策として使用することも、危険箇所からの脱出という意味で同じ目的であって、そうした事故が火災などに付随することも考慮すれば、要所に適切に使用することによって本来の避難誘導システムが十分に活かされる場面も多いはずです。

(※低温(特に冷凍庫など)の倉庫内では蓄光素材の性質上、発光が機能しない場合があります。)

屋外での活用は?

消防認定品でいわゆる「新蓄光」が登場したことによって、耐紫外線の性能も向上しました。
もっとも、実際に屋外に設置するには耐水性も考慮された仕様のものでなければなりませんが、では実際にこうした蓄光性の安全ラベルおよび標識は、屋外でその機能を十分発揮できるでしょうか。

まず蓄光素材の特性から、「照明が遮断された直後にその明るさを最も発揮する」という点があります。
周囲が暗くなった後は時間の経過に伴って、蓄光素材の明るさ(輝度)は徐々に低下してゆきますが、それでも真っ暗闇の状況ではそれなりに長時間視認することができます。


しかし、急激に明かりが消える屋内と違い、「屋外の暗所」とはおおむね夜になることを意味します。日没における周囲の暗さとは急激ではなく、徐々に時間をかけて暗くなるものです。つまり暗くなってゆくにつれて既に発光が始まっているという状況となるため、少なくとも屋内のように「照明が遮断された直後の明るさ(初期輝度)」を期待する事は難しいと言えるでしょう。加えて、人々が往来するような箇所では夜間であっても街灯やその他の照明によって、朝まで薄暗い状況が継続する事が多く、完全な暗所での視認性とはあまり関わりがなくなります。


しかし、そうした街灯がない場所や、都市の電気網が機能しない状態の災害時にも明示できるように、屋外の標識に蓄光素材が使用されている例があります。
これらには耐候性はもちろん、長時間の残光性能を備えたものであることが推測されます。

結論からすれば、屋外で使用されるものは上記の理由から、屋内を想定したものより高いりん光性能と長い残光時間を備えた性能が必要という事になります。
広域避難所の標識に使用されている例でも、蓄光素材部分に象嵌加工のように十分な厚みが設けられるなど、用途に合わせて長時間残光するような措置が取られています。